認知症について学ぶ オレンジケア Part.11 What's Care Pass?

地域ごとの認知症ケアパスを策定するために
~自治体/介護保険者として取り組むこと~

地域ごとの標準的な認知症ケアパスの策定

 地域ケアパスとは、認知症の人の生活機能障害の進行にあわせて、いつ、どこで、どのような医療・介護サービスを受けることができるのか、具体的な機関名やケア内容等を、あらかじめ、認知症の人とその家族に提示するものです。

 

『認知症ケアパス作成のための手引き (案) - 厚生労働省』より

 これにより、地域住民たちは、自分やご家族、近所の方が認知症になった場合に、どこでどういったサービスを受けることができるのかの具体的なイメージを持つことができるようになりますし、また、「自分だったらどういうサービスを受けたいか」「自分の親だったらどういう生活を送らせてあげたいか」など、事前にシュミレーションをすることができるようになります。これは非常に重要なことです。
 なぜなら、人の生活習慣や価値観が多様化している現在、ご本人がどういうサービスを望んでいるのか、どういったサービスがその人にとって適切なのかを周囲の人間で判断することはとても難しいからです。
 しかし、だからといって介護する側の都合でサービスを組み合わせたり、本人が望んでいないサービスを良かれと思って提供したとしても、よいケアにつながるとは限らず、場合によってはご本人の拒否にあったり、介護がうまくいかないからと虐待が起こってしまう等、ケアがますます難しくなってしまう危険があります。
 認知症は、進行と同時に身体機能も低下していく傾向が見られます。つまり、疾患の進行にともなって、必要となる支援が徐々に異なっていきます。そのため、地域で認知症の人の生活を支えるには、現段階でどこの地域に、どういった生活機能障害をお持ちの認知症の人が何人いて、どういったサービスを利用しているのか、今後疾患の進行に合わせ、どういったサービスや支援が必要になるかを踏まえながら社会資源を整備していく必要があります。
 今後、ますます増加する認知症の人を支えていくために、地域福祉を担う自治体/介護保険者がまとめ役となり、地域に足りない社会資源があれば充足をし、過剰な社会資源は新規整備を抑制したり、不足しているサービスへの切替えを検討するなどして、地域福祉をさらに充実させていきましょう。

 

今後目指すべき基本目標-「ケアの流れ」を変える-

厚生労働省認知症施策検討プロジェクトチーム「今後の認知症施策の方向性について」

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このプロジェクトは「認知症の人は、精神科病院や施設を利用せざるを得ない」という考え方を改め、「認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会」の実現を目指している。『資料:厚生労働省認知症施策検討プロジェクトチーム「今後の認知症施策の方向性について」』

この「ケアの流れ」を変えるという基本目標を実現するために、医療、介護サービス、見守り等の日常生活の支援サービスが地域で包括的に提供することができる体制を目指し、以下の7つの視点に立って、今後の施策を進めていくこととしています。

7つの視点

  1. 標準的な認知症ケアパスの作成・普及
    ① 認知症の状態に応じた適切なサービスの提供

  2. 早期診断・早期対応
    ① かかりつけ医の認知症対応力の向上
    ② 「認知症初期集中支援チーム」の設置
    ③ アセスメントのための簡便なツールの検討・普及
    ④ 早期診断等を担う「身近型認知症疾患医療センター」の整備
    ⑤ 認知症の人の適切なケアプラン作成のための体制の整備

  3. 地域での生活を支える医療サービスの構築
    ① 「認知症の薬物治療に関するガイドライン」の策定
    ② 一般病院での認知症の人の手術、処置等の実施の確保
    ③ 一般病院での認知症対応力の向上
    ④ 精神科病院に入院が必要な状態像の明確化
    ⑤ 精神科病院からの円滑な退院・在宅復帰の支援

  4. 地域での生活を支える介護サービスの構築
    ① 医療・介護サービスの円滑な連携と認知症施策の推進
    ② 認知症にふさわしい介護サービスの整備
    ③ 地域の認知症ケアの拠点としての「グループホーム」の活用の推進
    ④ 行動・心理症状等が原因で在宅生活が困難となった場合の介護保険施設等での対応
    ⑤ 介護保険施設等での認知症対応力の向上

  5. 地域での日常生活・家族の支援の強化
    ① 認知症に関する介護予防の推進
    ② 「認知症地域支援推進員」の設置の推進

地域ケアパスを用いることで、認知症の人が地域で安心して暮らせるために必要な医療と福祉の連携を工程表化して一目でわかるように示します。

 

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