認知症について学ぶ オレンジケア Part.4 How to Care ?

ケアの方法

認知症ケアの考え方は固定的・医療的な見方が強い傾向にあります。ただ、認知症を患った方々の心情も様々で、一言で括れる症状ではありません。そして「認知症患者は自覚がない」という考えも大きな間違いで、不安になって苦しむのは本人も同じなのです。最近は「生活者として、社会人として、その人を捉えるべき」という見方が増えてきました。

NHKの『三好流 ワンポイント介護』に出演されていた理学療法士の三好春樹氏が、認知症の方を介護する際の原則を提唱されています。

認知症ケアの7大原則

  1. 環境を変えない

  2. 生活習慣を変えない

  3. 人間関係を変えない

  4. 介護をより基本的に

  5. 個性的な空間づくり

  6. 1人1人の役割りづくり

  7. 1人1人の関係づくり

 

公益社団法人認知症の人と家族の会では、『はじめて認知症の人と向き合うとき、介護者にのしかかる戸惑いや不安、負担の大きさに対応する心構え』として、認知症を患う人のために家族が出来る10箇条を送っています。

「認知症」の人のために家族が出来る10ヵ条

  1. 見逃すな「あれ、何かおかしい?」は、大事なサイン。
    認知症の始まりは、ちょっとしたもの忘れであることが多いもの。単なる老化現象とまぎらわしく、周囲の人にはわかりにくいものです。あれっ、もしかして?と気づくことができるのは、身近な家族だからこそです。

  2. 早めに受診を。治る認知症もある。
    認知症が疑われたら、まず専門医に受診すること。認知症に似た病気や、早く治療すれば治る認知症もあるのです。また、適切な治療や介護を受けるには、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症などをきちんと診断してもらうのは不可欠です。

  3. 知は力。認知症の正しい知識を身につけよう。
    アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症では、症状の出方や進行、対応が違います。特徴をよく知って、快適に生活できるよう、その後の家族の生活や介護計画づくりに役立てましょう。

  4. 介護保険など、サービスを積極的に利用しよう。
    介護保険など、サービスを利用するのは当然のこと。家族だけで認知症の人を介護することはできません。サービスは「家族の息抜き」だけでなく、本人がプロの介護を受けたり社会に接したりする大事な機会です。

  5. サービスの質を見分ける目を持とう。
    介護保険サービスは、利用者や家族が選択できるのが利点。質の高いサービスを選択する目が必要です。また、トラブルがあったときは、泣き寝入りせず、冷静に訴える姿勢を持ちましょう。

  6. 経験者は知恵の宝庫。いつでも気軽に相談を。
    介護経験者が培ってきた知識や経験は、社会資源の一つ。一人で抱え込まずに経験者に相談し、共感し合い、情報を交換することが、大きな支えとなります。

  7. 今できることを知り、それを大切に。
    知的機能が低下し、進行していくのが多くの認知症です。しかし、すべてが失われたわけではありません。失われた能力の回復を求めるより、残された能力を大切にしましょう。

  8. 恥じず、隠さず、ネットワークを広げよう。
    認知症の人の実態をオープンにすれば、どこかで理解者、協力者が手をあげてくれるはず。公的な相談機関や私的なつながり、地域社会、インターネットなどのさまざまな情報を上手に使い、介護家族の思いを訴えていきましょう。

  9. 自分も大切に、介護以外の時間を持とう。
    介護者にも自分の生活や生甲斐があるはず、「介護で自分の人生を犠牲にされた」と思わないように自分自身の時間を大切にしてください。介護者の気持ちの安定は、認知症の人にも伝わるのです。

  10. 往年のその人らしい日々を。
    認知症になっても、その人の人生が否定されるわけではありません。やがて来る人生の幕引きも考えながら、その人らしい生活を続けられるよう、家族で話し合いましょう。

 

生活歴の把握が重要

介護を行ううえで、嬉しいこと、好きなこと、得意なこと、きらいな食べ物、苦手なことなど、若い頃からの生活歴を把握しているかどうかでケアの方法は全く異なります

以前の認知症ケアでは、徘徊や不潔行為、帰宅願望など「問題行動(BPSD)」と呼ばれ、忌み嫌われていましたが、現在はその症状から「行動・心理症状」(Part.2を参照)という位置づけで、あらゆる問題行動にはすべて原因があり、適切なケアで改善できると考えられるようになってきました。

できるだけその人にとって嬉しく楽しい、心地よい状態や行為を引きだすことが最善と言われており、かつての暮らしそのものの再生を目指し、日常生活の延長こそが最高の認知症ケアと考えられています。

現実には、介護する側にも生活があり、上記のような理論を実現するのは困難なのが実情です。しかし、少ない時間で限りなくストレスフリーな介護を目指すには、互いの楽しさを見つけていくことが第一歩となります。

 

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